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今月(H19.12月)より兵庫のギター製作家田中清人氏に「ルネッサンスギター」を製作依頼しています。 その製作工程をご紹介します。 ルネッサンス期のギターは4コースで弦長も現在のギターより遥かに小型で当時の大衆に親しまれていました。このギターはバロック期に大型化し5コースとなり、そして現在の6弦と変化しました。 しかし、この4コースのギターはフランスなどヨーロッパ全土に広がり、ポルトガル人によってハワイに持ち込まれ、それが現在のウクレレに進化したと言われています。 つまり、現在のギターやウクレレの原型がこの「ルネッサンスギター」にあるのです。 ギターやウクレレがどのようにして作られるか興味がありますが、その素朴な音色は現在でもきっと通用する素晴らしい楽器かと思います。 |
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No.1 (H19年12月) 製作に入る前に田中氏と材料の打ち合わせをしましたが、これが始めて送られて来た写真です。 表面板は20年間自然乾燥させた「ヨーロッパスプルース」、裏板と横板は「メイプル」で同じく10年間寝かせて置いたものです。 既に裏板が型どおりに切られています。 |
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No.2(H19年12月12日) 表面板とロゼッタが仕上がりました。 通常、ギターやウクレレのサウンドホールには何も付いていませんが、ルネッサン時代には写真右のような「ロゼッタ」がついています。 製作家が丹念に彫刻したもので、音へのこだわりを感じさせてくれます。 この「ロゼッタ」はチェンバロなどの鍵盤楽器にもその名残があります。 それはチェンバロがこのようなギター族から進化して来た為かと思います。 (教室に置いてあるチェンバロの蓋を開けて見てください) 写真に写っている黒檀の柄が付いた細い彫刻刀は、糸鋸の刃で田中氏自作のものです。 さすがにこのように小さな彫刻刀は市販されていないようです。 |
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NO.3 (12月15日) 裏板が仕上がってきました。 裏板は「メイプル」というカラデ材で作られていますが、この材料はバイオリンやチェロなどにも多く使用されています。木目がとても綺麗ですね。 《工房便り》 (田中氏からの説明文) 表板、裏板とも1枚板ですが、裏板には補強材は接着せずに、 ふくらみと、厚みに違いをつけることで強度を設定します。 最終的な仕上げは、表板、ネックなどを接着してから行います。 写真に写っている道具は四方に反りが付けられた3種類の鉋です。 これで裏板両面の微妙なふくらみを削り出していきます。 四方反り鉋の一つは(金属製のもの)は西洋鉋です。 日本の鉋は引いて削りますが、西洋鉋は押して削る構造になっています。 四方反り鉋は、場合によっては押し削りの方がやり易いのです。 |
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NO.4 (12月22日) (← 写真をクリックすると裏板側の様子が見れます) 前回 NO.3では表面板・裏板を別々に製作していましたが、今回では横板も型枠で既に形作られています。 別々に作られた表面板・裏板・横板を接着する段階のようです。 木肌は磨かれて白っぽく見えますが、最終段階で塗装されてより綺麗な仕上がりになると思われます。 《工房便り》 ボディが出来上がり、これからネックとヘッドを作っていきます。 響板を接着しているところの写真で、押さえに使っているものは竹バネです。 欧米では柳の木や鋼のバネを使います。 私は孟宗竹と真竹を使っていますが、竹は割り方や削り方で簡単に好みの 弾力にすることができたいへん便利です。 |
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NO.5 (H20.1.8) 今回はヘッドとネックの部分の製作です。 驚いた事にヘッドとネックは別々に製作して、それを結合させているようです。 通常、ギターやウクレレのこの部分は殆ど初めから1本で出来ていますので、とても製作が丁寧ですね。 リュートなどヘッドが直角になっている楽器なども同じように作られているのでしょうね。 それと、ヘッド・ネックとも薄いメイプル材で“コーティング”されていて、装飾効果があります。 《工房便り》 糸巻きは現代の金属製のものを使用しますので、 ネックとヘッドはできるだけ軽くする必要があります。 ヘッドはごく軽いリンデン材(菩提樹)をメープルでサンドイッチ状に貼り合わせ、ネックは、これもごく軽いセドル材に0,5mm厚のメープル・ベニヤを巻きました。 |
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NO.6 (H20.1.9) ネックとボディが結合した所です。 随分と “楽器” らしくなってきました。弦長が41センチとの事ですので、コンサートウクレレ(38センチ)より3cm長くて、テナーウクレレ(43センチ)より2センチ短いです。 ボディに5ミリの溝を彫る作業はとても難しそうですね。角度や深さを間違えるとネック部分にも影響されると思いますので。 それにしても、細かな緊張感のある作業ですね。 《工房便り》 ネックを接着しました。 ネックはボディに5mmほど埋め込まれています。 右の写真はネックを埋め込む箇所を彫り込んでいるところです。 ネックが取り付けられると楽器らしくなります。 この後は、響板側に縁飾りを入れ、指板、ブリッジを接着します。 そして、最後はニス塗りということになります |
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NO.7 (H20.1.21) 通称 “ハチマキ” と呼ばれる縁飾りが取り付けられたところです。 一台の楽器を製作するのは細かな工程が沢山あるものですね。 《工房便り》 響板の縁飾りを入れました。 最初の写真は縁飾りをベンディング・アイロンで曲げているところです。(右上写真) 約170度の熱で曲げていきます。 2枚目の写真(左下写真)は響板の縁飾りを入れる部分を削り取っているところ。自分で改造した特殊な際鉋(きわがんな)を使っています。 3枚目は、ゴム・バンドで締め、接着したところです。(左上写真) |
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NO.8 (H20.1.31) 指板と駒部分が接着されたところです。 本体は細かなペーパーでしっかり磨き上げられていて木肌がとても綺麗ですね。 さて、最後の塗装が楽しみです。 《工房便り》 ルネッサンス・ギター、指板とブリッジの接着をし、木地磨きを終えました。 これからニス塗りにかかりますが、ある程度ニスを塗ってからフレットを打ち込みます。 表板はリュートと同じように薄いオイル・ニスを滲みこませるだけにしますが、その他の部分にはセラック・ニスを塗り、ある程度塗膜を作ります。 使用するセラックは、基本的にはできるだけ精製していないもの、シード・ラックかレモン・セラックを使用します。 シード・ラックの方が精製が浅く、より原料に近いものです。色はレモン・セラックに比べやや褐色がかっています。 レモン・セラックは褐色がかったレモン色に仕上がります。ニスの色あいは添付した画像のような感じになります。 |
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NO.9() 少しニスが塗られて随分と仕上がりが近いようです。 この写真でも既に仕上がっているようにも思えます。 それにしても見事な楽器です。 《工房便り》 ニスの色付けがほぼ終わり、牛骨のフレットを打ち込みました。 フレット交換などメンテナンスがやり易いように緩い打ち込みにし、 タイト・ボンドで固定しました。 フレット仕上げについては、当HPを参照していただければと思います。 http://www.eonet.ne.jp/~kiyond/fret-work.html この後、仕上げのニス塗りにかかります。 |
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NO.9(H20.2.27) ほぼ3週間ぶりに届いた画像です。やはり手作りの楽器というのは大変な作業ですね。 《工房便り》 ルネッサンス・ギター出来上がりました。 写真右上はエンドピンを作っているところです。 材はブリッジと同じものでアメリカ産のウォルナットです。 中央の白丸は象牙。 3コースの弦は巻き弦とモノ弦を張っていますが調弦はユニゾンです。 高音側から弾弦したときと低音側から弾いたときの、隣の弦との繋がりが不自然にならないよう、こうしました。 ケースがあと1週間ほどで出来上がってくる予定です。ケースが届き次第お送りします。これからストラップを作ります。 |
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