BGM演奏/「アンダルーサ」 by TOMOFUMI

 昨年の秋ぐらいの頃、息子の智史(大学1年生)が、「お父さん、“アンダルーサ”のピアノ譜があったら持ってきてくれない」と言うので、「この曲はかなりむずかしいよ」と言いながらも、家に持って帰って渡してあげた。

小学生でバイエル程度でやめてしまって、昨年の春からまたピアノを弾き始めたので、この曲はかなり実力以上に難しいと思った。

この“アンダルーサ”はギター曲としてコンサートなどではよく弾かれるが、実は元々はグラナドスというスペインの作曲家の作品で、「スペイン舞曲集」に収められているピアノの名曲だ。

喜んで楽譜を見るなり「なに、コレ!難しすぎ!」とちょっとリズムに自信なさそうだった。

それ以来インターネットから様々なピアノやギター演奏を聞きながら、ずっと練習していたようだった。
(中でもセゴビアのギター演奏が気に入っていたようだった)

2月の終わり頃、「お父さん聞いてくれない」と言いながら、自宅の電子ピアノでこの“アンダルーサ”を弾いた。
細かいことは以前にも教えたが、自分でもかなり細かいところまで研究していて、息子なりの良い演奏だった。

 その日の深夜、居間のホツトカーペットで寝っころがって、二人でいろんな話で盛り上がっていた時、「この曲俺がなんで弾きたいか知ってる?」と聞いてきた。
「知らん!」とそっけなくビール飲んでいたら、「この曲は俺が小学生の頃、九州のバアちゃんの家に行っていた時に、いつもお父さんがよくギターで弾いていたから」とのこと。

子供の頃からずっと記憶の中にあった好きな曲のようだった。
夏休みに必ず帰省していたのだから、多分午前中に「夏の友」の宿題をしながら、私の弾く “アンダルーサ” を聴いていたのだと思う。

今度は“アストゥーリアス”を弾きたいと、アルベニスの「スペイン組曲」の楽譜を買ってきて、嬉しそうに見せてくれた。
息子にはギターを教えなかったが、私の好きなギター曲を受け継いでくれていたのだった。

息子は現在二十歳の春。私が九州の片田舎で一人でギターを弾き始めた時と同じ年齢になった。                                                 平成15年3月8日